PET検査とは?

PET(ペット)検査とは、「ポジトロン断層撮影法」のことで、X線CTのような装置で、心臓や脳などの働きを断層画像(輪切りの断層と縦切りの断層があります。)としてとらえ、病気の原因や病状を的確に診断する新しい検査法です。この検査では、ポジトロン(Q2を参照)を放出するくすりを、静脈から注射したり、呼吸により体内に吸入していただきます。くすりが体の中を移動して、心臓や脳などからだのいろいろなところに集まる様子を、からだの外から「PET装置」で撮影します。検査の目的に合わせてくすりを選ぶことにより、脳や心臓、がんなどの診断ができるのです。

 

ポジトロンとは?

ポジトロンとは、陽電子といって正(プラス)の電荷をもった電子のことです。通常、「電子」は負(マイナス)の電荷をもっていますが、それとは反対に、ポジトロンは正の電荷を持っています。正の電荷を持つポジトロンと負の電荷を持つ普通の電子は、互いに引き寄せ合う性質があるため、ポジトロンはすぐに電子と結合します。この結合の瞬間に、ポジトロンも電子も消滅してしまいます。この時、2本の放射線を正反対の方向へ放出します。この放射線を前ページの写真のような「PET装置」で撮影することによって、身体の中のポジトロンの様子を画像にするのです。

 

ポジトロンを放出する元素にはどんなものがありますか?

ポジトロンを放出する元素は、「ポジトロン核種」と呼ばれ、放射性同位元素(※)の仲間です。これらは、半減期(寿命)が短いため、病院内のサイクロトロンという装置で造られます。ポジトロン核種には、表-1に示すような種類があり、小型のサイクロトロンで造った18F(フッ素-18)、15O(酸素-15)などのポジトロン核種が、PET検査に多く用いられています。 ※放射性同位元素の「同位元素」とは、同じ位置にある元素という意味で、化学的に同じ性質をもっていますが、質量が異なるもののことをいいます。

表-1 ポジトロンを放出する元素の種類
ポジトロン核種 半減期※ 製造方法
11C炭素-11 20分 小型サイクロトロン
13N窒素-13 10分 小型サイクロトロン
15O酸素-15 2分 小型サイクロトロン
18Fフッ素-18 110分 小型サイクロトロン
62Cu銅-62 10分 ジェネレーター
68Gaガリウム-68 68分 ジェネレーター
82Rbルビジウム-82 75秒 ジェネレーター

※半減期とは、放射能の強さが半分に減少するまでの時間で、
炭素-11ならば、20分で1/2、40分で1/4になってしまいます。

 

用いられるくすりにはどんなものがありますか?

人体が必要としている酸素、水、糖分、アミノ酸、脂肪酸、核酸、神経伝達物質などに、ポジトロン核種を標識(※)した化合物が、PET検査に用いられるくすりの正体です。 検査の目的に応じた化合物を「注射剤」や「吸入剤」の形に調製します。これらのくすりを、静脈注射や呼吸によって体内に取り込むことによって、PET装置で断層像が撮影できるのです。

※「標識」とは、目印になるポジトロン核種を化合物の一部に組み込んだり、置き換えたりすることです。標識された化合物からは、ポジトロンが放出され、そのポジトロンと電子がぶつかって放射線が出ますので、これをPET装置で検出することができるのです。

 

使われるくすりはどのようにつくられるのですか?

PET検査用のくすりはきわめて半減期(寿命)が短いので、病院内にある専用の施設でつくられます。その施設では、まず、サイクロトロンと呼ばれる装置でポジトロン核種を製造し、できたポジトロン核種を種々の方法でくすりの元となる化合物に標識して、目的の「くすり」をつくります。そして、純度試験や無菌試験を行い、合格したくすりを実際のPET検査に用いるのです。

 

脳のPET検査では何がわかるのですか?

脳は血流により運ばれたブドウ糖や酸素を大量に消費しています。また、脳には神経細胞の間で情報を交換するための神経伝達物質や神経受容体といわれるものがあります。
脳の血流やエネルギー代謝は、神経細胞の活動が盛んな部位で高く、活動が衰えた部位では低くなります。PET検査では、ブドウ糖や酸素の代謝をみることによって、脳の局所の機能がわかります。また、神経受容体の状態などもみることができます。

 

心臓のPET検査では何がわかるのですか?

心臓は、24時間休まずに全身に血液を送る大切なポンプの役目を果たしています。そのため心臓の筋肉には多くの血液が流れ、たくさんのエネルギーが消費されています。
PET検査によって、心臓の筋肉の血流が鮮明な画像として得られます。これにより正確に心臓の異常を見つけることができます。また、心臓の筋肉に必要なエネルギーの利用の程度をみることもできます。

 

がんのPET検査では何がわかるのですか?

がん細胞は正常の細胞よりも分裂が盛んに行われるため、グルコース(糖分)がたくさん必要とされます。そのため18F-FDGというくすりを静脈から注射しますと、がんの病巣にたくさん集まります。その様子を、PET装置で身体の外から撮影しますと、がんがどこにあるのか(存在の有無)、その大きさはどのくらいか(病巣の大きさ)がわかります。
PET検査で正確な診断ができると治療法や治療範囲を決めるのに大変役立ちます。特に予想外の病巣を見つけることで、治療範囲を正しく決められます。

 

検査前の注意事項は?

糖の代謝を正しく診断するためには、検査当日の朝食から、絶食をしていただく必要があります。水や砂糖無しのお茶は飲んでも良いのですが、甘いものは避けてください。お菓子も、検査が終わるまでがまんしていただきます。
くすりを注射してから撮影までのあいだは、できるだけ安静にしていてください。
筋肉を使うとくすりが筋肉に集まってしまいますので、特にがんの診断のときには、診断が難しくなる場合もあります。また、検査の直前には、膀胱内にあるくすりの代謝物を排出するために、排尿をしていただきます。

 

判明するがんは?

18F-FDGのPET検査は、ほとんどのがんの診療に有用です。肺癌や大腸癌、食道癌、膵癌などの消化器系の癌、子宮癌、卵巣癌などの婦人科系のがんや甲状腺癌、乳癌、悪性リンパ腫や骨腫瘍、悪性黒色腫などの診断にも役立ちます。

 

転移したがんは?

この検査はがんの転移をみつけるのに大変役立ちます。がんは、転移のあるなしによって、治療法が変わりますので、この検査は有用です。前立腺癌では、原発巣が膀胱と重なり、よく分からないことがありますが、膀胱と離れた骨に転移すると、膀胱と重ならないのでPET検査でよくわかります。

 

PET検査が不得手なのは?

18F-FDGを用いるPET検査も、すべてのがんで役立つわけではありません。このくすりは腎臓を経て尿に排泄されます。したがって、腎臓とか膀胱にがんがあっても、よく分かりません。Q11でも述べたように、前立腺癌でも膀胱との区別が難しいのです。
また、肝臓癌、胃癌、前立腺癌は超音波検査や内視鏡検査などの方が、PET検査より有用なことが多いようです。このように、PET検査が適しているものと適していないものがあります。

 

がんの早期発見に役立つのですか?

PET(ペット)検査とは、「ポジトロン断層撮影法」のことで、X線CTのような装置で、心臓や脳などの働きを断層画像(輪切りの断層と縦切りの断層があります。)としてとらえ、病気の原因や病状を的確に診断する新しい検査法です。この検査では、ポジトロン(Q2を参照)を放出するくすりを、静脈から注射したり、呼吸により体内に吸入していただきます。くすりが体の中を移動して、心臓や脳などからだのいろいろなところに集まる様子を、からだの外から「PET装置」で撮影します。検査の目的に合わせてくすりを選ぶことにより、脳や心臓、がんなどの診断ができるのです。

 

腫瘍の良性か悪性かの診断に役立つのですか?

悪性の腫瘍では、18F-FDGの取り込みが高く、良性の腫瘍では18F-FDGの取り込みが低いことが多いようです。腫瘍への18F-FDGの取り込みの程度で、腫瘍の性質を診断するのですが、全ての腫瘍で悪性か良性かがきちんと鑑別されるわけではありません。

 

被ばくはどのくらいあるのですか?

PET検査では、ポジトロン核種を標識したくすりを静脈注射したり、呼吸によって吸入しますので、わずかですが放射線被ばくがあります。 たとえば、18F-フルオロデオキシグルコースというくすりを注射してPET検査を1回受けますと、およそ2.2mSv(ミリシーベルト)になります。これは、人が地球上で普通に暮らしていて、大地からの放射線や宇宙線、体内にある放射性元素によって被ばくする平均的な被ばく線量である2.4ミリシーベルト(※)とほぼ同じ量です。

※国連科学委員会の報告書による世界平均の被ばく量です。

 

被ばくではどのような影響があるのですか?

2.2mSvという量では、急性の放射線障害が起きる可能性はいっさいありません。また、将来のがんの発生などを心配されているとすれば、その可能性もほとんどないといえます。国際放射線防護委員会によれば、2.2mSv(※)の被ばくによって10,000人に1人が、将来がんで死亡する可能性があるとされています。これは、どんなに少ない放射線でもがんが発生する可能性があるという仮説に基づいて推定された確率ですが、実際にはこの線量で発がんが確認された例はありません。また、特定の人が、そうなるという意味ではありません。結論としては、この程度の被ばくではほとんど心配ないということになります。

※一般には、放射線被ばくはできるだけ少なくするのが原則的な考え方です。しかし、医療の場合には、診療の結果、患者さんが受ける利益が、放射線の被ばくによる害を上回ると医師が判断した場合には、特定の被ばく限度を設けなくてよいことになっています。

 

健康保険で受診できるのですか?

平成20年4月現在では、健康保険を適用できるPET検査(ポジトロン断層撮影)は、「15O標識ガス剤を用いた場合」と「18F-FDGを用いた場合」の2種類です。なお、18F-FDGを用いた場合には、てんかん、虚血性心疾患、悪性腫瘍(脳腫瘍、頭頚部癌、肺癌、乳癌、膵癌、転移性肝癌、大腸癌、悪性リンパ腫、悪性黒色腫及び原発不明癌、食道癌、子宮癌、卵巣癌に限る。)の診断を目的として、一定の要件を満たす場合に保険適用できることになっています。

 

end faq

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